はっしゃんです。
ランチェスター戦略のエントリーでは、
これから株式投資を志す方や、
1から学び直したい方向けに
ランチェスター理論と戦略に基づいた
科学的な投資手法について
考えていきたいと思います。
このエントリーでは弱者である
個人投資家が市場とどう向き合うべきか。
玉石混合の市場から勝ち馬を見いだし、
いかに戦わずして勝つかについて掘り下げます。
3回目はオンリーワン企業の発掘を念頭に
「新しい価値の創造」
について考えてみます。
スポンサーリンク
ランチェスターの数式
ランチェスターの法則は、
同じ性能の武器を持った2者が戦う場合、
数が多い方が勝つことを
平易な数式で証明した軍事法則です。
もっとも、元の数式は、
武器の性能も含めた計算式
で示されています。
第1法則:a1 – a2 = e(b1 – b2)
第2法則:a1^2 – a2^2 = e(b1^2 – b2^2)
変数:
a1:戦闘前のA軍の兵力
a2:戦闘後のA軍の残存兵力
b1:戦闘前のB軍の兵力
b2:戦闘後のB軍の残存兵力
e:武器の性能差
これまでは簡略化のため、
武器の性能を同じ(e=1)
と仮定して説明してきましたが、
実は、武器の性能によって
勝敗はどうにでもなる法則と
解釈することもできます。(笑)
強者を凌ぐ武器を手に入れることは
並大抵のことではありませんが。
武器の性能差
さて、ランチェスターの法則では
数に劣るものを弱者
とし、それぞれについて
とるべき戦略を説いています。
この法則を製造業や小売業などの
企業競争にあてはめると、
同じような店舗で
似たような商品を売っている限り、
「弱者に勝ち目はない」
ということになります。
そして、弱者が勝つためには、
強者とは異なる店舗で
違う商品を売ることから
スタートします。
この強者と差別化された
異なる店舗、違う商品が
「武器の性能差」となります。
数の力と武器の性能
ランチェスターの法則における
数と武器の関係を
マトリックスであらわすと
次のようになります。
武器で優位 | 武器で不利 | |
数で優位 | 1)強者必勝の状態 | 2)強者の防衛戦 |
数で不利 | 3)弱者の挑戦 | 4)弱者必敗の状態 |
上の例で弱者に勝機があるのは、
2)または3)の状態です。
弱者が勝つためには、
商品開発にしろ、店舗開発にしろ、
強者の「数の優位」に対抗できる
「武器の優位」が絶対条件です。
強者の防衛戦である2)と
弱者の挑戦である3)は、
裏返しの関係になっていますね。
そして、弱者の勝利条件である
武器の優位ですが、
これは、強者に真似のできない
新規性と進歩性を持った絶対優位
である必要があります。
仮に絶対優位でないとすると
後から強者に真似をされれば、
簡単に優位を崩されてしまいます。
イノベーションによる創造と破壊
弱者が手にすべき絶対優位を
別の言葉に置き換えると、
「オンリーワン」
となります。
そして、オンリーワンの武器を
手に入れるための手段が、
「イノベーション」
です。
投資家視点からの
ランチェスター戦略の真理は、
弱者という不利な状況から
オンリーワンの武器を獲得し、
イノベーションを達成して、
既存市場をひっくり返す方法論です。
強者と差別化することで、
細々と生き残って行くという
ニッチ戦略タイプもあります。
マーケティングとイノベーション
では「イノベーション」とは、何でしょうか?
「経営の神様」
ピーター・ドラッカーは、
企業の目的は、
顧客の創造であり、
そのための機能は、
・イノベーション
の2つに集約される
と述べています。
マーケティングは、
ランチェスター第2法則
「集中効果の法則」
すなわち強者に優位な戦略です。
それに対してイノベーションこそが、
ランチェスターの第1法則
「一騎打ちの法則」
に当てはまる弱者が採るべき戦略
と言えるでしょう。
創造と破壊
イノベーションは革新であり、
新しい価値の創造です。
既存の価値観をひっくり返す、
新しい商品価値や店舗価値を作ることです。
それは顧客の潜在的ニーズから生まれ、
顧客の支持とともに成長し、
やがて古い価値を破壊します。
馬車→自動車
レコード→CD
公衆電話→携帯電話
ブラウン管→液晶パネル
白熱灯→LED
いずれも後者が普及して、
前者は役割を終えています。
初代iPhoneを発表するときに、
「電話を再定義する」
と言いました。
まさにイノベーションですね。
成功前のアップルを発掘せよ
というわけではありません。(笑)
小さなイノベーションは
私たちの周りにも、
少なからずあります。
マーケティングで売上を維持しつつ、
次のイノベーションを探すことが
企業の命題となりますが、
投資家としては一歩引いて、
「イノベーションを手にしつつある企業」
を割安な時期に発掘・投資
できればよいわけです。
弱者の戦略
弱者であったとしても、
顧客により近い位置で、
・技術の進歩や変化
を捉えることで、
強者の「数の優位」に
対抗できる弱者の武器
「イノベーション」を手にする
ことは可能です。
強者には既得権益を守る必要があること。
既存モデルの改善やコスト削減をしながら、
マーケティングで利益を最大化している事情もあり、
意外とイノベーションに到達しにくいようです。
イノベーションは、
マーケティングや規模の経済から
生まれるものではなく、
顧客ニーズや市場の要請から
生まれてくるものと言えるでしょう。
ランチェスター戦略は、
弱者がイノベーションを
実現するための方法論
となりますので、
経営者や起業家はもちろん、
投資家(特に成長株投資家)にとっても、
知っておいて損はない
知識であると言えます。
ランチェスター戦略<その4>に続きます。
株初心者のためのランチェスター戦略
あとがき
「ランチェスターの法則」や
「孫子の兵法」に共通することは、
戦争で勝利するためには、
不確実性(ギャンブル性)を排除して、
いかに戦わずして勝つか。
負ける要素を減らし勝つべくして勝つかです。
株式投資の世界も
命の次に大切なお金をかけて
初心者とプロが同じ土俵で戦う
立派な戦場ですから、
同じことが言えると思います。
投資家はっしゃんは、
成長軌道に乗った弱者に
長期投資することで
成長利益を獲得してきました。
また、投資家としても
月次情報投資、理論株価投資など、
弱者の戦略を徹底することで
生き残ってきました。
自分は弱者という立場にたって株式投資や
投資先企業について考えてみましょう。
戦略なくして勝利なしです。