今日は決算書の先頭ページから、
未来の企業価値を計算する方法について、
具体例を交えて解説します。
このコラムでは企業価値の計算に
はっしゃんが開発して実際に利用している
5年後株価計算ツールを使用します。
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INDEX
決算短信で使う3項目
ここでは、5年先の企業価値を
5年先の理論株価として考えます。
理論株価は将来の企業価値を示すものとして、
最も適切な指標の1つだと思います。
理論株価の算出にも様々な手法がありますが、
今回は、はっしゃん式理論株価を使います。(笑)
実は、はっしゃん式理論株価は、
決算短信1ページ目から3項目の数値を
拾うだけで計算することができます。
チェックする項目は、
・1株純資産
・今期予想の1株利益 (経常利益or税引前利益)
の3項目だけです。
3項目のうち、自己資本比率と、
1株純資産は、そのまま使います。
1株利益は、1株当たり当期純利益がありますが、
継続性のない一時収益や特別収支を外すため、
経常利益や税引前利益から計算しなおす場合があります。
経常利益×(1-実行税率)=最終利益 ※経常利益の60-70%程度
であれば、おおむねOKです。
そうでない場合は、経常利益や税引前利益の
60-70%程度の数値で代用します。
(厳密には、損益計算書から実効税率を逆算します)
<9843>ニトリHDの決算短信の例
先日、32期連続増収増益を達成したニトリの
決算短信1ページ目は下のようになっています。
使用する数値は、赤枠の3項目になります。
本決算では、今期予想の数値を使いますが、
1Q-3Q決算では、四半期利益を
進捗率で調整して使うことが多いです。
2Q:利益を2倍する
3Q:利益を4/3倍する
企業価値を計算する
続いて、上記3項目から理論株価を計算します。
計算には、はっしゃん監修5年後株価計算ツールを使っています。
5年後株価計算ツール
成長率と財務3指標の設定
まず、ツール画面の中ほどにある
設定画面に3項目の数値を入力します。
いっしょに株価も入力します。
入力できたら、[5年後の株価を計算する]ボタンをクリック。
5年後株価チャート
数値が正しく入力できていれば、
下のような5年後株価チャートが表示されます。
左端の青い棒グラフが現在の株価。
横の3色の棒グラフが現在の理論株価です。
そして、
1年後、2年後、3年後、4年後、5年後と
5年先までの企業価値の推移を表示しています。
このグラフでは、5年後に30%程度の
企業価値増が見込めることを示しています。
成長率を変更して考える
ニトリの場合、2020年2月期の利益成長率が4.9%だったので、
成長率は、初期設定の5%で計算しました。
ツールでは1-5年後の成長率を
1年毎に変更することもできます。
5年先の企業価値は、成長率によって大きく異なります。
例えば、成長率が10%になった場合と
成長率0%になった場合のグラフが下のものです。
成長率10%では、5年後の企業価値は80%近く増加しますが、
成長率0%の場合は、-3%とマイナスになります。
そして、成長率10%と0%とでは、
5年後の企業価値に2倍近い差があることも分かります。
バックテストで検証する
企業価値の計算は過去データに対しても同様ですので、
過去の決算短信を遡っていくとバックテスト的に
株価と企業価値、理論株価の連動性を確認できます。
ニトリの決算短信を5年前まで遡って、
理論株価をつないだのが下のチャートです。
連動性は銘柄によって異なりますが、
ニトリの場合は高い連動性が確認できました。
ROA、ROEが成長のカギ
上のニトリの場合は、右肩上がりがピークを打った形ですが、
成長率が10%以上に伸びる企業と、5%、0%に減速する企業では、
どのような違いがあるでしょうか?
そのカギとなる指標がROA、ROEになります。
5年後株価計算ツールでは、ROA、ROEの推移も表示
できますので、見てみましょう。
さらにリンクをクリックして、ROA・ROEを分母と分子に分解し、
ビジュアル表示することもできます。
10%成長時のROA、ROEは横ばい、
5%成長時では減少しているのが分かります。
一般に成長期の企業ではROA、ROEが上昇しますが、
ピークを過ぎると伸びが鈍化してきて横ばいとなり、
さらに、成長ペースが落ちると減少に転じます。
ROA、ROEの時系列変化をみると成長が加速しているか、
減速しているかの見通しをある程度予測できますので、
バックテストで確認して成長率予測に活用しましょう。
成長期:ROA、ROEが上昇
安定期:ROA、ROEが横ばい
減速期:ROA、ROEが低下
ROA、ROEが減少に転じた成長企業は、
増収増益でも理論株価は上昇しにくくなります。
ニトリのチャート例は、ROA、ROEが天井を打ち、
成長のピークを過ぎた経緯を示すチャートとなっています。
自分で考えて判断する
成長率で企業価値に大きな差があることや
ROA、ROEとの関係が分かりましたね。
長期投資、成長株投資の肝は、利益成長率です。
説明してきたようなプロセスで予測は可能ですけど、
実際の未来のことは、誰にも分かりません。
NYテロや東日本大震災のような想定外の出来事も発生します。
最終的には、自分で考えて判断するしかありません。
ツールを活用して、よい企業を探してください。
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