理論株価は、どの程度当たるものなのか?
当たるという人もいれば、
当たらないという人もいるでしょう。
今回は、理論株価とリアル株価の相関度について、
全銘柄を回帰分析で検証して、
その理由を解き明かしたいと思います。
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INDEX
理論株価とリアル株価の相関を回帰分析で検証する
回帰分析は、リアル株価に発行済み株式数を乗じた時価総額と
理論株価に発行株済み株式数を乗じた理論時価総額について
2020/03/18 日経平均 16,726円 ※コロナショック株価急落の局面
のリアル株価を対象に検証しました。
(理論時価総額に対する時価総額の相関分析)
※ここでいう理論株価は、はっしゃん式理論株価です。
回帰分析とは?
身長と体重など、依存関係にある2つの変数は、
一方に数値が与えられたとき、
他方の数値を予測することができます。
回帰分析は、このような関連する2つの変数の
相関の強さを相関度rで表す統計分析です。
0.7 >= r > 0.4 相関
0.4 >= r > 0.2 弱相関
0.2 >= r > 0.1 微相関
0.1 >= r => 0.0 非相関
全銘柄の回帰分析
結論から言えば、全銘柄の理論株価とリアル株価は、
非常に強い相関関係となりました。
なお、このグループのトップ企業はトヨタです。(2019年4月現在)
対象銘柄:全上場銘柄
横軸x: 理論時価総額
縦軸y: 時価総額
相関係数:強相関
2019.04.12: r=0.93 (n=3595)
2020.03.18: r=0.92 (n=3687)
2021.03.25: r=0.82 (n=3755)
2024.07.28: r=0.91 (n=3913)
※投資学習Web<理論時価総額マップ>では、理論時価総額の回帰分析を毎日更新しています。全銘柄の最新データはこちらです。
上グラフの赤線がr=1の時価総額と理論時価総額の完全一致線。
紺色の線が理論時価総額の回帰線です。
赤線と紺色線との傾きの差が、
完全一致ラインとの乖離度を示しますが、
理論時価総額の分布は、
紺色の回帰線を中心とする
正規分布になっています。
ただし、この回帰分析は1点だけ問題があり、
すべての真実を捉え切れていない側面があります。
その理由とは、回帰分析の性質上、
時価総額が大きい銘柄ほど相関度に与える影響が大きい
ことになるからです。
上のグラフでも日本株で圧倒的な時価総額1位である
右上のトヨタの数字が非常に大きな影響を与えています。
投資家的には、少し違いますよね。(笑)
そこで、時価総額を段階的に絞り込んでいき、
企業規模別に回帰分布してみることにしましょう。
企業規模別に理論株価とリアル株価の相関を検証する
理論時価総額5000億円(大型株)以下の回帰分析
理論時価総額5000億円以上の超大型株を
除外した大型株以下グループが下のグラフです。
このグループのトップはオリンパス。(2019年4月現在)
全銘柄時と同様に強相関となっていますが、
相関度は、やや低下しました。
上の全銘柄グラフと比べると、
バラツキが大きいような気がしますね。
対象銘柄:5000億円以下
横軸x: 理論時価総額
縦軸y: 時価総額
相関係数:強相関
2019.04.12: r=0.82 (n=3360)
2020.03.18: r=0.78 (n=3485)
※投資学習Web<理論時価総額マップ>では、理論時価総額の回帰分析を毎日更新しています。大型株の最新データはこちらです。
理論時価総額500億円(中型株)以下の回帰分析
さらに絞り込んで理論時価総額500億円以下の
中型株以下を対象としたのが下グラフです。
このグループのトップは、メルカリ。(2019年4月現在)
相関度は、大型株の強相関から並みの相関へ低下しました。
多くの銘柄は回帰線付近に並んでいますが、
離れた位置にあるものも目立っています。
対象銘柄:500億円以下
横軸x: 理論時価総額
縦軸y: 時価総額
相関係数:相関
2019.04.12: r=0.46 (n=2393)
2020.03.18: r=0.52 (n=2590)
※投資学習Web<理論時価総額マップ>では、理論時価総額の回帰分析を毎日更新しています。中型株の最新データはこちらです。
理論時価総額100億円(小型株)以下の回帰分析
対象をさらに絞り込み理論時価総額100億円以下の
小型株以下グループを対象としたのが下グラフです。
このグループのトップは、サンバイオ。(2019年4月現在)
相関度は、中型株の相関から弱相関へと低下。
回帰線から上下離れた位置に分布する銘柄が
かなり目立つようになってきました。
対象銘柄数:100億円以下
横軸x: 理論時価総額
縦軸y: 時価総額
相関係数:弱相関
2019.04.12: r=0.22 (n=1210)
2020.03.18: r=0.25 (n=1366)
※投資学習Web<理論時価総額マップ>では、理論時価総額の回帰分析を毎日更新しています。小型株の最新データはこちらです。
理論時価総額50億円(超小型株)以下の回帰分析
最後に理論時価総額50億円以下の
超小型株グループを対象としたのが下グラフです。
このグループのトップは、Kudan。(2019年4月現在)
相関度は、ついに相関なし、または微相関に。
この水準において、数学的な相関はほぼ認められない
という結果となりました。
対象銘柄:50億円以下
横軸x: 理論時価総額
縦軸y: 時価総額
相関係数:非相関-微相関
2019.04.12: r=0.10 (n=740)
2020.03.18: r=0.14 (n=872)
※投資学習Web<理論時価総額マップ>では、理論時価総額の回帰分析を毎日更新しています。超小型株の最新データはこちらです。
回帰分析まとめ
以上の回帰分析結果をまとめると、
・ただし、企業規模が小さいほど相関関係は低下する
・理論時価総額50億円以下ではほぼ相関なし
となりました。
相関度は、企業規模によって異なるわけですから、
当たるという人もいれば、
当たらないという人もいるわけですね。
これが真実だと思われます。
株価急落と相関度の関係
検証した2点の相関度を比較すると、
2019/04/12 日経平均 21,870円
2020/03/18 日経平均 16,726円 ※コロナショック株価急落の局面
時価総額 | 日経平均 21,870円 の相関度 |
日経平均 16,726円 の相関度 |
全銘柄 | r=0.93 | r=0.92 |
5000億以下 | r=0.82 | r=0.78 |
500億以下 | r=0.46 | r=0.52 |
100億以下 | r=0.22 | r=0.25 |
50億以下 | r=0.1 | r=0.14 |
・株価急落時は、小型株の相関度は上昇する
ということも言えるでしょう。
これは、理論株価が四半期決算ベースの
ファンダメンタルズから計算されているのに対し、
コロナショックのような株価急落時には、
将来の変化を織り込むためと考えられます。
大型株の相関が低下するのは、
業績悪化が見込まれる銘柄が
先行して株価に織り込まれるため。
小型株の相関が上昇するのは、
割高だった人気株が売り込まれて
フェアバリューに近づくため
だと思われます。
投資家がとるべき戦略
小型株はPERやPBRで考えられない数字になるし、
大型株は、ほぼ市場コンセンサスを基準に動く。
そして、企業規模が大きくなれば理論株価に収斂していく。
おおむね妥当なところでしょう。
個人投資家の場合は、小型株が中心
という方も多いかと思いますが、
これらの結果を踏まえて、
投資家がとるべき戦略としては、
小型株を対象に短期売買を繰り返す場合は、
株価と理論株価に相関はほとんどないため、
理論株価を全く気にする必要はない。
おそらく購入時には、理論株価との相関は少ないが、
長期保有の結果、企業規模が拡大するにつれて、
長期的に理論株価へ収斂していくことになるため、
ある程度、意識しておく必要あり。
長期的には、業績が右肩上がりの企業への投資が重要。
理論株価と連動した動きをとることが多くなるため、
理論株価の構成要素となる財務指標を常に意識しておく必要がある。
決算結果を予測して、目標とする理論株価を設定するのが基本。
長期投資では、業績が右肩上がりの企業への投資が重要。
になるかと思います。
ご参考になれば、幸いです。
理論時価総額マップ
この記事の回帰分析には、はっしゃん監修の下記ツールを使用しています。
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