株ブログ はっしゃん式 発掘チャート


賢者は歴史に学ぶ。株式市場の記憶に残る名場面を株価チャートで再現して振り返る懐古的株ブログ

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<7211>三菱自動車の株価を20年で10分の1にした4回の不祥事


発掘チャート
三菱自動車リコール隠し再発時の株価チャート

2度のリコール隠し事件前、
三菱自動車は、トヨタ、日産、ホンダ
に次ぐ国内第4位のメーカーでしたが、
度重なる不祥事で顧客離れが相次ぎ、
企業価値は事件前の10分の1。
バブル期の30分の1に縮小しています。

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発掘チャート<7211>三菱自動車

リコール隠し事件

三菱自動車1回目のリコール隠しは内部通報により発覚しました。
運輸省が2000年7月に内部通報の情報を元に抜き打ち検査を実施。
リコール制度の発足から30年以上にわたって欠陥を隠蔽したり、
公表せずにヤミ修理を行っていた実態が明らかになりました。
その数は、乗用車、大型車合わせて69万台

このリコール隠し事件で、社長が辞任に追い込まれたほか、
国内販売台数も急減。資本提携先のダイムラー・クライスラーから
エクロート氏を迎え入れて再建を図ることになりました。

1回目のリコール隠し事件での株価は、
 発覚前:462円 (2000年7月 現株価では4620円)
 発覚後:311円 (2000年9月 現株価では3110円)
発覚前月から最大32.7%の下落となっています。
この段階では多くの国民が、体制が一新され、
改善されるだろうと思っていたわけです。

■月足チャート(2000年5月-2000年9月)三菱自動車リコール隠し事件時の株価チャート

※株価チャートは株式併合による補正を反映しています。

2002年1月、三菱トラックのタイヤが外れて、
通りがかりの母子3人に激突。
母親が死亡するという痛ましい事故が発生します。

2002年10月には、三菱の大型車がブレーキ操作不能に陥り、
運転していた男性が自損事故で死亡するという事故も発生。

これらの事故に対して三菱サイドは、
ユーザー側の整備不良と主張していましたが、
構造的な欠陥が原因であることが突き止められ、
74万台にのぼる再度のリコール隠しが発覚しました。

1回目のリコール隠しは、乗用車部門が中心で、
2回目のリコール隠しは、大型車が中心でした。
1回目の時点で運輸省が監査に入ったのは、
乗用車部門だけだったので、未監査の大型車部門は、
従来通りの不正を続けていたわけです。

この異常事態に、ダイムラー・クライスラーは、
支援の打ち切りを発表してエクロート氏は辞任。

さらに、2004年5、6月には死亡事故に関する
業務上過失致死傷で三菱自動車関係者が相次ぎ逮捕され、
三菱自動車も起訴されることとなります。

三菱自動車は、倒産の危機に陥りますが、
三菱重工などの三菱グループが支援を表明し、
最悪の事態を免れることになりました。

2回目のリコール隠し事件で株価は、
 高値:350円 (2000年4月 現株価では3500円)
 安値:72円 (2004年8月 現株価では720円)
最大79.4の下落となっています。

■月足チャート(2003年8月-2004年9月)三菱自動車リコール隠し再発時の株価チャート

※株価チャートは株式併合による補正を反映しています。

再発当初、三菱自動車は疑惑を否定しており、
株価もいったん上昇している点が特徴ですが、
事態の深刻化で一気に大幅下落に転じました。

はっしゃんの友人が1名、重工に勤務していますが、
三菱のクルマを購入して三菱自動車を支えていました。
同じような人は、たくさんいるはずです。
三菱は生き残りましたが、エアバッグ暴発事故のタカタは倒産に至りました

燃費不正事件

燃費不正事件は、三菱から軽自動車のOEM提供を
受けていた日産が燃費数値の異常に気づいて発覚しました。

燃費データはメーカーが走行試験を行った結果を
国交省に提出することになっていますが、
三菱自動車は、過去の実験データを流用するなど、
不正な手口で燃費をよく見せていました。

不正は、走行試験を委託された子会社で行われており、
実際の性能と比べ過大な目標を要求された子会社が、
窮して行ったことが判明しています。

■月足チャート(2014年1月-2018年12月)三菱自動車燃費不正事件での株価チャート

本来はクルマの性能を上げなければならないのに、
子会社に燃費責任を押しつけていたことになります。

この不祥事で三菱自動車の株価は三度目の暴落。
今度は、日産傘下として出直すことになります。

燃費不正事件で株価は、
 発覚前:843円 (2016年3月)
 発覚後:412円 (2016年4月)
発覚前月から最大51.1%の下落となっています。

ゴーン会長不正事件

カルロス・ゴーン会長の不正事件については、
下のコラムでまとめています。

カルロス・ゴーンの逮捕により、ルノー・日産・三菱自動車のアライアンスは最大の危機を迎えました。

前科3犯の三菱自動車は、日産の後ろ盾で
信用を担保している状況です。
ルノーを含む3社との関係次第では、
株価も影響を受けることでしょう。

ゴーン会長不正事件で株価は、
 発覚前:711円 (2018年10月)
 発覚後:658円 (2018年11月)
発覚前月から最大7.5%の下落となっています。

三菱自動車の不祥事まとめ

2000/07/06 リコール隠し発覚 (内部通報)
2000/07/18 リコール隠し事件 (運輸省監査)
2002/10/19 トラック暴走事件 (運転手死亡)
2003/10/24 母子3人死傷事件 (母親死亡)
2004/03/11 リコール隠し再発
2004/04/22 ダイムラークライスラー支援打ち切り
2004/05/06 三菱ふそう前会長ら7人逮捕、法人起訴
2004/06/10 三菱自動車元社長ら6人逮捕、法人起訴
2016/04/20 燃費不正事件 (走行試験子会社の不正)
2018/11/19 ゴーン会長逮捕 (日産での不正)
■月足チャート(1999年1月-2018年12月)三菱自動車の20年株価チャート

不正体質の改善は非常に難しい

三菱自動車の一連の事件は、
不正体質の改善が非常に難しい
ことを示しています。

「ウソを付いてはいけない」
「ズルをしてはいけない」
のは、当たり前の事ですが、
都合のよいウソは信じてしまう
ようです。

三菱自動車だけが不正体質を
克服できなかったのではありません。

同じ自動車業界では、
SUBARUや日産自動車でも
完成車検査の不正が再発しています。

不正再発は致命的な経営ダメージ
となる恐れがあります。

三菱自動車の場合は、20年で4回の不祥事により、
株価は10分の1まで縮小しました。

不正の前科を持つ企業への投資は、
再発リスクを十分考慮せねばなりません。

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あとがき

私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。

「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。

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