はっしゃんです。
今回は2011年3月11日。
東日本大震災の福島第一原発事故による
東京電力の株価チャートを
当時の日経平均株価やTOPIX、NTTの
株価動向と合わせて紹介します。
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発掘チャート<9501>東京電力
2011年3月11日に発生した巨大地震の後、
福島第一原発では、津波による全電源喪失のため、
1、2、3号機で水素爆発と炉心溶融が発生。
(当時は、正確な状況が公開されていませんでした)
福島第一原発から半径20kmに非難命令が出され、
東北地方を中心に放射性物質が飛散しました。
■東京電力の株価推移
2011/03/11 2,121円 ※14:46 巨大地震発生
2011/03/14 1,621円 ストップ安
2011/03/15 1,221円 連続ストップ安
2011/03/16 921円 3連続ストップ安
2011/03/17 798円
2011/04/09 292円 事故前からの下落率-86.2%
地震の発生は後場引け前の14:46で、
このとき津波警報は発令されていましたが、
まだ津波が到達しておらず、
東京電力の株価は-1.5%で終わっています。
ところが、津波到達後から事態は急速に悪化。
土曜、日曜の2日間で最悪の状況に至ります。
震災後、3月14日(月)から日本市場の取引が始まり、
東京電力の株価は急落。3日連続でストップ安となり、
震災前の3分の1近い水準まで急落します。
その後は、いったん反発したものの、
24日には水道水から放射能検出の報道で再び下落。
さらに、高濃度の汚染水漏洩や除染費用など
深刻な問題が次々と明らかとなり、
4月6日には株価292円の安値を記録します。
(事故前からの下落率-86.2%)
この頃には、原発事故の復旧費用が、
明らかに企業の支払い能力限界を超えており、
株主責任や国有化の声が上がっていましたが、
5月13日に公的資金を注入し、破綻を回避する方針が示されました。
日経平均とTOPIX、NTTの株価推移
東日本大震災後、日経平均株価は急落。
安値は発生から8ヶ月後に記録しました。
これはリーマン・ショック後の最安値です。
■震災前後の比較
震災発生直後:10693.66円
震災後の安値: 8135.79円(-23.9%、8ヶ月後)
直後水準回復:2013年1月(1年10ヶ月後)
同様にTOPIXも急落しましたが、
東京電力のほかNTTなど超大型株が急落。
下落率では日経平均を上回っていて、
最安値はリーマン・ショックをも下回り
平成30年間の最安値になっています。
TOPIXの安値記録は発生から1年3ヶ月も後のことでした。
■震災前後の比較
震災発生直後:955.59
震災後の安値:692.18(-27.6%、1年3ヶ月後)
直後水準回復:2013年2月(1年11ヶ月後)
■NTTの上場来安値
震災直後にNTTが上場来安値805円を記録します。
2022年3月現在は3400円程度ですので株価は当時の4倍以上。
NTTは、現在115円配当なので、当時購入していたら
配当利回り14.3%ということになります。
また、日経平均、TOPIXともに
震災直後水準の復帰まで2年近く
かかっています。
・TOPIXはリーマン・ショック以上の下げ
・震災前水準復帰までの時間が長い
東日本大震災の影響がいかに
甚大なものであったかが分かります。
災害に備える
災害は忘れた頃にやってくると言われますが、
日本に住んでいるということは、
地震を受け入れて生きていく
ということになります。
東日本クラスの大地震も
将来、高い確率で起こることが
発表されています。
南海地震や関東大震災が発生すると、
株価は暴落するでしょうし、
停電してネットにはつながらない
スマホも電池が切れると
役に立たないでしょう。
非常時に金融資産に占める日本株の割合が高かったり、
レバレッジを賭けすぎたりしていると、
人命の危機と同時に金融資産にもリスクが及びますので
万が一を考慮すべきかもしれません。
また、5年10年という長期でみると
災害で株価が暴落したところは
投資チャンスと前向きに捉えることもできます。
国難の時に慌てて売る投資家ではなく、
買い支えられる投資家になりたいものです。
その後の東京電力
民主党政権は東電の企業責任を免責しない方針
を貫いたものの、リーマン・ショックから2年半、
回復途上だった日本経済が、破綻処理に伴う混乱に
耐え切れないとの現実的な判断から、
8月には原子力損害賠償支援機構法を成立させて、
10兆円以上といわれる事故処理費用を電気料金に上乗せして
国民が肩代わりすることで決着させました。
(その後、費用は20兆、70兆と増額見通しになる)
■原発事故後の最安値とその後の戻り高値
2012/11/13 120円 事故前からの下落率 -94.3%
2015/08/03 939円 最安値からの上昇率 +682.5%
破綻と混乱は回避されましたが、
実質は、数十兆円の債務超過で倒産状態
に陥っている東電の株価(もちろん無配)
ということで、100円台での推移が続き、
2012年11月には120円の最安値
(事故前からの下落率-94.3%)
を記録しています。
その後、2013年に自民党政権が復活し、
原発行政の転換可能性やアベノミクスへの期待から、
株価が上昇する局面もありましたが、東電への風当たりは強く、
全原発の運転停止が続きます。
川内原発を皮切りに、新基準に適合した原発が再稼働しています。
・2015年8月 九州電力 川内原発
・2016年1月 関西電力 高浜原発
・2018年3月 関西電力 大飯原発
・2018年6月 九州電力 玄界原発
・2018年10月 四国電力 伊形原発
2018年6月には、福島第一原発に続いて、
福島第二原発も廃炉とする方針が示されました。
(当然、コストは国民負担になる)
なお、2022年3月現在では、
ロシア軍のウクライナ侵攻により、
国内のエネルギー供給が逼迫しつつあり、
一部から原子力エネルギー稼働による
危機回避の声が出始めています。
原発事故発生から11年。
東京電力の2022年3月10日の株価は約330円。
底値からは、3倍弱まで戻していますが、
企業責任が消えることはないでしょう。
関連リンク
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あとがき
私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。
・バブル相場(1989年)
・ITバブル(2000年)
・NYテロ(2001年)
・リーマン・ショック(2008年)
・東日本大震災(2011年)
・チャイナ・ショック(2015年)
・コロナ・ショック(2020年)
「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。