今回は、2019年1月30日のマザーズ市場暴落の
震源となったサンバイオ・ショックについて考えてみます。
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再生医療ベンチャー
サンバイオは、再生細胞薬の開発を手がける
創薬ベンチャーで2015年4月マザース上場。
脳梗塞や外傷性脳損傷に有効性があるとされる
再生細胞薬SB623の開発、臨床試験を進め、
大日本住友製薬を開発パートナーとして、
米国および日本での承認、販売を目指しています。
脳梗塞や脳損傷により脳細胞が破壊されてしまうと、
命をとりとめても半身不随などの重い後遺症が残り、
既存医療での回復は困難です。
脳梗塞:日本123万人、米国680万人
外傷性脳損傷:日本100万人、米国530万人
再生細胞薬SB623は損傷部に注入することで、
破壊された細胞を再生、脳機能を修復・回復させることが、
米国フェーズ1/2a試験で有意性ありと認められており、
本試験(2b)の結果が注目されていました。
・フェーズ1試験
・フェーズ2a試験 ← ここまで通過して2015年上場
・フェーズ2b試験 ← 2017年末に投与を完了し結果待ち
・フェーズ3試験
・承認・販売
2試験までは少数の患者、3試験では多数の患者を対象とする
また、SB623は患者の細胞を培養する自家移植ではなく、
ドナー細胞を培養するため大量生産が可能で、
臨床試験に合格すれば、ビジネス的な成功はもちろん、
脳梗塞や脳損傷の後遺症に苦しむ患者にとっても、
画期的な新薬となることが期待されていました。
ノーベル賞という触媒
このような状況で2018年10月1日、
がん治療薬オプシーボの開発者である
本庶佑氏にノーベル医学・生理学賞
というニュースが報道され、日本中が沸き立ちました。
第2の小野薬品を探せということで、
バイオ株が好意的に捉えられました。
これがバブルの触媒になったと思われます。
急騰・急落を演じ、ハイリスク株というコンセンサスがあります。
そして、ノーベル賞報道から1ヶ月という最高のタイミングで、
2018年11月2日 SB623が日米で外傷性脳損傷の本試験(フェーズ2)に合格
のニュースがリリースされました。
・フェーズ1試験 ← 免除(脳梗塞で確認済み)
・フェーズ2試験 ← 有意性あり合格
・フェーズ3試験 ← 再生医療推進法により日本では免除申請が可能
・承認・販売
※SB623は脳梗塞、脳損傷の2ラインで臨床試験を実施
外傷性脳損傷の合格により、SB623は、
日本では早期承認制度により申請承認後、販売が可能
米国ではフェーズ3試験入り
脳梗塞
米国でのフェーズ2b結果待ち
という状況になり、成功を先取りしたバブル相場がスタートしたわけです。
発掘チャート<4592>サンバイオSB623バブル
サンバイオ株は、合格リリース後、4連続ストップ高となるなど急騰し、2ヶ月間で4.1倍まで上昇しました。
ピーク時の時価総額は6330億円。メルカリの2倍近い水準となり、マザーズ市場全体の10%超を占めるまで膨らんでいました。
■サンバイオ4連続ストップ高
2018/11/01 3685円 日米で外傷性脳損傷フェーズ2試験に合格
2018/11/02 4385円 +700円ストップ高(+19.0%)
2018/11/05 5090円 +705円ストップ高(+16.08%)
2018/11/06 6090円 +1000円ストップ高(+19.65%)
2018/11/07 7090円 +1000円ストップ高(+16.42%)
2019/01/21 12,730円 発表前の4.1倍
医薬品セクター時価総額ランキング
創薬ベンチャーは、当たれば莫大な利益が見込めますが、失敗すればゼロ。
社員数わずか8名で、売上5億円・赤字の会社が、大手製薬会社を凌ぐ時価総額になっていたわけですから、夢のある話だと思いますが、さすがに過大評価ではないかと思います。
1. <4502> 武田 68860
2. <4519> 中外薬 37499
3. <4503> アステラス 33509
4. <4568> 第一三共 28254
5. <4523> エーザイ 25540
6. <4578> 大塚HD 25460
7. <4507> 塩野義 21847
8. <4528> 小野薬 12701
9. <4151> 協和キリン 12014
10. <4506> 大日本住友 10254
11. <4581> 大正薬HD 10042
12. <4508> 田辺三菱 9527
13. <4967> 小林製薬 6482
14. <4592> サンバイオ 6330 ※ピーク時
14. <4536> 参天薬 6229
15. <4587> ペプドリ 5694
16. <4530> 久光薬 5396
17. <4516> 日本新薬 4953
18. <4527> ロート 3482
20. <4521> 科研薬 2548
サンバイオ・ショック
SB623バブルの熱狂は、
2019年1月30日 米国で脳梗塞フェーズ2b試験の主要項目が未達成
のリリースであっけなく崩壊します。
中核だった脳梗塞フェーズ2bの失敗により、SB623は、
日本では早期承認制度により申請承認後、販売が可能
米国ではフェーズ3試験入りも脳梗塞の失敗により暗雲
脳梗塞
フェーズ2b試験に失敗で戦略練り直し
となり、サンバイオは、
SB623によって限りなく成長が約束された会社から、
成長見通しが立たない会社へと転落してしまいました。
■サンバイオ4連続ストップ安
2019/01/29 11,710円 米国で脳梗塞フェーズ2b試験の主要項目が未達成
2019/01/30 8710円 -3000円ストップ安(-25.62%)
2019/01/31 7210円 -1500円ストップ安(-17.22%)
2019/02/01 5710円 -1500円ストップ安(-20.80%)
2019/02/04 3710円 -2000円ストップ安(-35.03%) ※値幅2倍
2019/02/05 2620円 -1090円(-29.38%) ※値幅2倍
マザーズ市場の時価総額10%超を占めていたサンバイオの暴落は、
市場全体に波及し、1/30のマザーズ指数を8%以上押し下げました。
2/4までで4日連続ストップ安となりましたが、
2/5には売買が成立し大商いとなりました。
フェーズ2b試験結果発表前から2/5までの下落率は、
-77.6%となりました。
関連リンク
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あとがき
私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。
・バブル相場(1989年)
・ITバブル(2000年)
・NYテロ(2001年)
・リーマン・ショック(2008年)
・東日本大震災(2011年)
・チャイナ・ショック(2015年)
・コロナ・ショック(2020年)
「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。