株ブログ はっしゃん式 発掘チャート


賢者は歴史に学ぶ。株式市場の記憶に残る名場面を株価チャートで再現して振り返る懐古的株ブログ

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<3053>いきなり!ステーキの成功・失敗とペッパーフードの現在地


発掘チャート
ペッパーフードの月足10年チャート

今回はいきなり!ステーキで
一躍ブームになったペッパーフードの
上場から頂点までと、転落について
後学のためにまとめたいと思います。

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発掘チャート<3053>ペッパーフード

ペッパーフードは2006年にマザーズ上場。
当初はペッパーランチ業態が人気で成長しましたが、
2007年、心斎橋店で店長らによる女性客強姦監禁事件が発生。
さらに、2009年に佐波川SA店で病原性O-157食中毒事件が発生すると、
イメージ悪化で客が離れ、低迷を余儀なくされます。

■ペッパーフードの月足チャート(2006年9月-2019年9月)上場後から2019年までのペッパーフードの株価チャート

■ペッパーフードの上場後推移
2006/09/21 マザーズ上場
2007/05/16 女性客強姦監禁事件
2009/09/05 病原性O-157食中毒事件
2010/06/01 ワイルドカットステーキ発売
2013/12/05 いきなり!ステーキ1号店オープン
2016/12/10 小池百合子都知事いきなり!ステーキ食事tweet
2017/02/23 いきなり!ステーキNY開店            
2019/02/14 いきなり!ステーキNY撤退
2019/11/14 赤字転落。いきなり!ステーキ大量閉店
2020/06/18 ペッパーランチ事業売却を発表

2010年にステーキを店内でカットする
ワイルドカットステーキがヒット商品となり、
2013年12月にいきなり!ステーキ1号店をオープン。
その後、大量出店と急成長をスタートします。

いきなり!ステーキの成長と頂点


はっしゃんが注文したワイルドステーキは200gで1,000円。(ライス別料金)

大量出店を開始したレストラン事業の既存店売上は、
前年同月比で200%、300%を超えるペースで
急激に売上を伸ばしていき、
ピークの2014年11月には全店売上402.2%を記録します。

しかし、大量出店店舗が1年を経過した、
2015年3月から既存店が12ヶ月連続で100%割れ。
月によっては70%、80%台まで記録するなど、
当初から既存店の集客力に問題
あったことが分かります。

■ペッパーフードのレストラン事業、いきなりステーキ事業の月次テーブルペッパーフードのレストラン事業、いきなりステーキ事業の月次テーブル

流れが変わったのは、2016年12月。
6月に当選を果たし、当時は人気絶頂だった
小池百合子都知事が池袋店での食事風景をツイート。

そこからは、量り売り、立ち食い、割安などの
斬新な営業スタイルも話題となり、
普段ステーキを食べない層にまで
リーチすることに成功します。
そこから既存店売上も100%超え15回の絶頂期を迎え、
ピーク時の2017年9月には既存店141.6%を記録しました。

その後、ブームがピークアウトしていくと、
既存店売上が少しずつ悪化し始めるも、
大量出店を継続したことで、
後に業績が急転悪化する原因となります。

 参考までに、ファストリーテーリングは、格安フリースでユニクロ現象が頂点となった2000年9月に全店売上308.4%、既存店売上231.2%を記録しています。

ペッパーフードが株価150倍になった理由

いきなり!ステーキの成功により、
ペッパーフードの売上、利益は、
10倍、15倍へ急成長しました。

少なくとも株価が15倍になるのは当然ですが、
その後も、バブル的に上昇していき、
頂点は最安値から150倍となる8,230円を記録しました。

■ペッパーフードの理論株価チャート(2013年2月-2019年9月)いきなり!ステーキ以降のペッパーフードの理論株価チャート

■ペッパーフードの業績推移
2013年12月期 売上56億 経常利益2.0億 ← 12月いきなり!ステーキ1号店オープン
2014年12月期 売上87億 経常利益5.7億
2015年12月期 売上161億 経常利益7.6億
2016年12月期 売上223億 経常利益9.7億
2017年12月期 売上362億 経常利益23.2億
2018年12月期 売上635億 経常利益38.7億
2019年12月期 売上675億 経常利益-0.3億
2020年12月期 売上310億 経常利益-39.0億

株価が急騰を開始したのは、
小池百合子氏のツイート後にNY店の開店
米ナスダック市場上場を発表してからです。

これ以降、株価はブームで堅調な国内の成長と
米国での成功を織り込んで理論値の数倍まで上昇しますが、
既存店売上がマイナスに転じるとじり安となり、
決算利益が株価の伸びに追いつかなくなると急落していきます。

結局、NY店は2年で撤退となり、
ナスダック市場も上場廃止となりました。

2019年9月には、全店売上が95.4%、既存店売上が64.8%とマイナスに陥り、
消費税増税や台風の影響が出た10月は全店売上80.1%、既存店売上58.6%まで悪化。

結局、2019年11月に赤字転落を発表し、
いきなりステーキを大量閉店することになります。
しかしその後も、2020年はコロナ禍でさらなる苦境に陥り
創業事業であるペッパーランチ事業を譲渡
生き残りを図ることになりました。

2021年12月現在、決算書には継続企業の前提に関する注記が記されています。

 類似例としては、パズドラで一世を風靡したガンホーがあります。ガンホーもパズドラの海外進出成功を織り込んで株価が急上昇しましたが、チャレンジの失敗で急落を余儀なくされました。

いきなり!ステーキが失速した理由

当初は行列が出来るほど人気があった
いきなりステーキがなぜ失速したのか。

顧客満足度が低かったこと

いちばん大きな理由は顧客満足度が低く、
人気が一時的ブームに終わったことです。

・2017年をピークとするブームが去った(新規来店の減少)
・ブーム時に来店した新規客のリピート率が低かった

ブームは大きなチャンスでしたが、
リピーターの育成が失敗に終わりました。

・定期的にステーキを食す人は限られている
・ステーキにハレの食事を求める顧客層がリピートしない

ペッパーフードのPLを見ると、
原価率は55%以上を占めており、
コスパの高いステーキを提供していますが、
顧客スペースや店舗サービスなど、
それ以外の所を徹底的に合理化して、
利益を上げる構造であったため、
万人向けの満足度を提供できなかったようです。
(サラリーマンのランチ向け店舗作り)

それでも競合他社に先んじるため、
大量の新規出店に踏み切りますが、
本来は当初からの課題であるリピート率の向上
もっと本気で取り組んでおくべきだったかもしれません。

需要を供給が上回ったこと

ブームの結果、ステーキ愛好者の需要を
供給が上回ったことも大きいでしょう。
いわゆるレッドオーシャン化です。

・大量新規出店による自社競合の発生
・競合他社による類似店との競合の発生

ブームが終わったことで、
ステーキ愛好者がメイン顧客になりますが、
大量出店や競合他社の参戦により、
需要を供給が上回ってしまいます。

■いきなり!ステーキの店舗数
2014年12月:30店舗
2015年12月:77店舗
2016年12月:115店舗
2017年12月:186店舗
2018年12月:386店舗
2019年12月:490店舗
2020年12月:287店舗
2021年10月:235店舗

限られた市場パイから売上を増やすためには、
来店回数を増やすか客単価を上げるしかありません。

ビジネスモデル特許の取得や
肉マイレージ、肉マネーチャージなど
何もやっていないわけではありませんが、
需要以上の店舗を作ってしまっては、
どうしようもないということです。

最後に投資家としてペッパーフードを見ると
月次情報が公開されていたことを考えると
このような成長倒れを見極めること
かなり容易な部類と言うことが言えます。

月次情報を知っているか知らないかで
それは大きな差となることでしょう。

 下記コラムでは、上昇期間1年程度のペッパーフード、上昇期間数年以上のワークマンを例に月次情報や理論株価を使って売買判断をする方法について説明しています。

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あとがき

私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。

「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。

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