株ブログ はっしゃん式 発掘チャート


賢者は歴史に学ぶ。株式市場の記憶に残る名場面を株価チャートで再現して振り返る懐古的株ブログ

スポンサーリンク

<2371>カカクコムの理論株価で分かる売上、利益50倍でも株価12倍の理由


発掘チャート
カカクコムの20年理論株価チャート

今回は16年前の2003年10月、
マザーズ市場に上場したカカクコムを例に、
成長株長期投資について検証します。

このエントリーでは「はっしゃん式理論株価
を使って企業価値を計算します。
理論株価はチャート上では、
・緑色ライン:資産価値
・橙色ライン:理論株価 (資産価値+事業価値)
・水色ライン:上限株価 (資産価値+事業価値×2)
から成っており、四半期ごとの
財務指標から計算されています。

スポンサーリンク

成長の軌跡

上場直後の割高な時期

■カカクコムの株価チャート(IPO-2007年)2007年までのカカクコムの理論株価チャート

※株価は分割補正されています

カカクコムはITバブルの崩壊から
復活しつつあった2003年にマザーズ上場。
初値の175円は理論株価の8倍でした。

■上場直後の株価水準
理論株価 22円
上場初値 175円 (分割補正前4,200,000円)

上場後の業績は上向きでしたが、
ITバブル後の上場ということもあり、
どちらかというと過熱感は少なく、
理論株価の変動も、わりと少なめです。

特に2006年1月のライブドアショック以降は、
2006年3月期の業績が減益に終わったことや、
新興株が全般的に売られた局面でもあるため、
その後、株価も2年近く調整しました。
(それでも理論値より高い水準を維持)

2005年5月の不正アクセス事件によるサイト一時閉鎖や
その後のセキュリティ対策コストの影響もあって、
2006年3月期は上場後で唯一の減益となっています。

なお、2005年3月には、後の成長エンジンとなる
食べログのβ版を開始しているほか、
東証1部へのスピード上場も果たしています。

上場直後の4年間の特徴は、
ITバブル期ほどの加熱感はありませんが、
株価が上限株価を上回って推移していて、
かなり割高だと言えるでしょう。

ITバブルの直後に上場した楽天のIPOからの成長の軌跡はこちらです。

食べログと右肩上がり成長

■カカクコムの株価チャート(2008-2012年)2012年までのカカクコムの理論株価チャート

※株価は分割補正されています
■カカクコムの業績推移
2004年3月期 売上12億 経常利益4.7億 (経常成長率)
2005年3月期 売上21億 経常利益7.9億 (+66.7%)
2006年3月期 売上29億 経常利益7.8億 (-1.3%) ※不正アクセス事件
2007年3月期 売上48億 経常利益13億 (+67.1%)
2008年3月期 売上69億 経常利益19億 (+48.0%)
2009年3月期 売上97億 経常利益39億 (+103.9%)
2010年3月期 売上130億 経常利益54億 (+38.8%)
2011年3月期 売上168億 経常利益78億 (+43.8%)
2012年3月期 売上200億 経常利益90億 (+14.7%)
2013年3月期 売上230億 経常利益116億 (+28.8%)
2014年3月期 売上298億 経常利益147億 (+27.2%)
2015年3月期 売上357億 経常利益171億 (+16.2%)
2016年3月期 売上412億 経常利益195億 (+14.1%)
2017年3月期 売上450億 経常利益211億 (+8.1%)
2018年3月期 売上467億 税引前利益228億 (+6.4%) ※IFRS
2019年3月期 売上548億 税引前利益248億 (+8.8%)
2020年3月期 売上620億 税引前利益265億 (+6.7%) ※会社予想

2008年といえばリーマンショックで
日本経済が停滞した時期ですが、
価格.com、食べログが牽引した
カカクコムは影響を受けることなく、
右肩上がりに成長しています。

リーマンショックの暴落でも
株価は、ほとんど下がっていない
のが分かると思います。
(10月の下げたところが絶好の買い場になっている)

また、この時期は、先行していた株価に
業績(理論株価)が追いついた点も特徴です。
(加熱していた期待が冷めたとも言える)

2012年3月期は20%の利益成長を予定していましたが、
最終的に14%の成長に終わったことで、
ピークを過ぎた雰囲気になりました。

この期間は、株価と理論株価が
ほぼ連動した上昇となっていて、
理論株価も97→970円と10倍に
急拡大しています。

株価が上限株価を超えて高くなるのは、
成長率が高く先高感の強い、
時価総額が小さい時期に多く、
企業規模が大きくなるにつれて、
成長ペースがも鈍化していき、
業績も予測しやすくなることから、
理論値へ収斂する傾向があります。

50社以上が倒産したリーマン・ショックの詳細はこちら

株価のピークと業績ピーク

■カカクコムの株価チャート(2013-2019年)2019年までのカカクコムの理論株価チャート

※株価は分割補正されています

この期間は主に食べログが牽引し、
価格.comに並ぶ2大サービスに成長するものの、
その後に続く第3のサービスは育成できず、
市場期待はやや萎むことになります。

2017年以降は売上成長が10%を割り込み、
理論株価も右肩上がりから横ばいに移行。
さらに成長が止まってきたことで、
株価が理論株価を割り込む場面もありました。

この少し前の2013年、株価は大きく値上がりし、
2354円の高値を付けていますが、
株価が上限株価まで達するピークでした。

その後、株価はこの高値を抜いていきましたが、
成長が鈍化したことで、売られる場面も増え、
2019年5月現在でも2013年高値を下回っています。

上限株価は、資産価値+事業価値×2のラインで、
売りの目安となる株価です。
事業価値が2倍になるには、
よほどの高成長株でなければ、
数年はかかりますから、
株価がバブル化しないとすれば、
売却して、他のフェアバリュー成長株
への乗り換えも選択肢になります。

ITバブル期に日本初の株価1億円を達成したのがヤフーです。

発掘チャート<2371>カカクコム

カカクコムはネットサービス専業で、
ROAが30%、ROE40%の超高収益企業です。
価格.com、食べログが2枚看板ですが、
両サービスの成長が減速しつつあり、
今後の成長戦略が問われています。

■カカクコムの16年間の成長と株価、理論株価の関係
売上 45.6倍
経常利益 52.8倍
理論株価 123倍
株価 12.9倍

15年間で理論株価は123倍になりましたが、
株価は12.9倍にとどまっています。
IPO時点の株価が理論株価の8倍だった点を考えると、
割高だった分だけ株価の上昇が抑えられ、
理論値に収斂した
という結果になります。

■カカクコムの株価チャート(20年チャート)カカクコムの20年理論株価チャート

※株価は分割補正されています

長期投資の教訓

カカクコムの株価から得られる長期投資の教訓です。

人気のあるIT企業に多いのですが、
とにかくIPO価格が高すぎると、
長期保有で期待通り成長しても
上昇率は抑えられる傾向にあります。

企業規模が小さい時ほど、株価は業績ではなく、期待と需給で動く
そして、企業規模が小さい時ほど、株価の値動きも大きい。
理論株価より割高な水準で買うほど長期投資のリターンは少ない
ただし、年単位で安値を待てば絶好の投資チャンスになることもあり。

成長株長期投資で重要なのは、

1.割安に買うこと
2.成長が続くこと

になりますが、
カカクコムの場合は、条件1を満たす期間が、
理論株価が株価に追いついた2009年以降です。
株価は、その後10年で5倍になっています。
(最初の5年は割高だったので2倍どまり)

成長は現在も続いていますが、
株価は理論株価を下回っています。
市場に期待される成長戦略を
再び描くことができるでしょうか。

あの時の株価は、今いくら

16年前のIPO当時、
カカクコム1株を420万で買っていたら、
現在の価値は、約5282万円です。
(2019年5月21日現在)

関連リンク

スポンサーリンク

あとがき

私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。

「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。

ピックアップ