2019年10月の消費税10%増税。
過去3回の消費税導入・増税局面では、
天使と悪魔いずれかのシナリオが発動し、
うち2回が悪魔のシナリオでしたが、
4回目となった消費税10%増税でも
悪魔のシナリオが発動しました。
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INDEX
消費税と日経平均株価
呪われた消費税と日経平均株価の
関係を振り返ってみましょう。
1989/04/01 消費税3%導入(平成バブル崩壊)
悪魔のシナリオ
1989年導入時は、
導入前1年の株価こそ好調だったものの、
導入後2年間はマイナスが続きました。
■消費税の導入と日経平均の騰落率
導入前1年:+25.1%
1988/3/31:26,260円
1989/3/31:32,838円
導入後1年:-8.7% ※バブル経済が崩壊
1989/3/31:32,838円
1990/3/31:29,980円
導入後2年:-19.9% ※湾岸戦争で株安に拍車
1989/3/31:32,838円
1991/3/31:26,292円
1997/04/01 消費税5%に増税(平成金融恐慌)
悪魔のシナリオ
1997年には、導入前1年の株価がマイナスで
消費税増税を強行して失敗しています。
■消費税の増税と日経平均の騰落率
増税前1年:-15.9%
1996/3/31:21,406円
1997/3/31:18,003円
増税後1年:-8.2% ※拓銀、山一連鎖破綻で金融危機発生
1997/3/31:18,003円
1998/3/31:16,527円
増税後2年:-12.0% ※長銀、日債銀破綻で平成金融恐慌
1997/3/31:18,003円
1999/3/31:15,836円
2014/04/01 消費税8%に増税(アベノミクス)
天使のシナリオ
アベノミクスが好調だった
2014年が例外になりますが、
チャイナショック後は低迷しました。
■消費税の増税と日経平均の騰落率
増税前1年:+19.6%
2013/3/31:12,397円
2014/3/31:14,827円
増税後1年:+29.5% ※アベノミクス好調でほぼ影響なし
2014/3/31:14,827円
2015/3/31:19,206円
増税後2年:+13.0% ※チャイナショックで世界同時株安
2014/3/31:14,827円
2016/3/31:16,758円
2014/11/01 消費税10%増税を延期
延期前1年:+14.6%
2013/10/31:14,327円
2014/10/31:16,413円
2016/06/01 消費税10%増税を再延期
延期前1年:-16.2% ※ギリシャ危機やチャイナショックで経済混乱
2015/05/31:20,563円
2016/05/31:17,234円
2019/10/01 消費税10%増税(コロナショック)
悪魔のシナリオ
消費税導入までの1年は-9.7%と影響を織り込み
増税直前から4ヶ月連続で上昇しました。
しかし2020年に入ってから新型コロナが
パンデミックとなり、東京オリンピックは延期。
株価も暴落してリセッションに入りましたが、
大幅な金融緩和で株価は反発しました。
■消費税の増税予定と日経平均の騰落率
増税前1年:-9.7%
2018/09/30:24,120円
2019/09/30:21,755円
増税後1年目:+5.2% ※コロナショック
2019/09/30:21,755円
2020/08/28:22,882円
消費税増税後を月次業績と株価で検証する
消費税の影響が大きいのは、
高額な耐久消費財を扱う業態ですが、
消費者の財布の紐が締まるため、
他の業態も影響を受けやすくなります。
2014年と2020年の増税前後の
月次業績を見るとよく似た動きになります。
<8282>ケーズデンキの事例
8%増税時は、増税3ヶ月前から売上が増加し、
直前は既存店が60%の大幅増となりますが、
株価はほとんど動きません。
その後、1年間は業績低迷が続き、
2年後から回復傾向となりました。
株価は9ヶ月目あたりから回復を見越し、
業績悪化の中を上昇していく
難しい流れになりました。
2ヶ月前 123.0 127.8
1ヶ月前 172.6 160.5
==消費税増税==
1ヶ月後 80.5 79.4
2ヶ月後 89.7 91.8
3ヶ月後 92.3 90.1
4ヶ月後 98.1 98.0
5ヶ月後 101.6 107.9
6ヶ月後 96.5 93.3
7ヶ月後 94.0 98.5
8ヶ月後 98.4 121.9
9ヶ月後 97.9 140.5
10ヶ月後 87.8 108.7
11ヶ月後 86.1
12ヶ月後 57.3
13ヶ月後 125.0
※2020年7月月次まで全店業績で比較
10%増税時は、7ヶ月目までは、
8%時とよく似たペースでしたが、
コロナショックが発生したことで、
在宅勤務向けの家電製品売上が急増。
株価はコロナショックで急落後に反発、
上場来高値にせまる水準まで上昇し、
高値圏で駆け込み需要の反動を
迎えることになりました。
<9843>ニトリの事例
8%増税時のニトリは20日〆で
4月(3月21日-4月20日)も数字を伸ばしていますが、
増税前1年間を通して好調だった業績が、
増税後1年間は低迷を余儀なくされたのが分かります。
ただし、市場は、成長ペースを維持すると判断したようで、
株価にそれほど大きな影響はなく、
11月から1月の3ヶ月間を除くと
右肩上がりの強い上昇を続けました。
2ヶ月前 127.0 119.5
1ヶ月前 115.1 113.0
==消費税増税==
1ヶ月後 92.5 93.1
2ヶ月後 96.6 92.7
3ヶ月後 94.6 97.1
4ヶ月後 105.5 102.0
5ヶ月後 105.3 110.9
6ヶ月後 96.5 96.0
7ヶ月後 94.0 100.6
8ヶ月後 97.6 147.4
9ヶ月後 94.9 122.7
10ヶ月後 99.0 115.0
11ヶ月後 81.9
12ヶ月後 91.2
13ヶ月後 117.7
※2020年8月月次まで既存店業績で比較
10%増税時は、6ヶ月目までは、
8%時とよく似たペースでしたが、
コロナショックが発生したことで、
在宅勤務向け家具の売上が急増。
株価もコロナショックの谷から反発した後、
大きく上昇して上場来高値を更新しました。
そして、ケーズデンキ同様に、
高値圏で駆け込み需要の反動を
迎えることになりました。
<月次Web>上場企業261社の月次情報を毎日更新
消費税増税で発動する天使と悪魔のシナリオ
悪魔のシナリオ
消費税導入・増税前の1年程度前から
需要の先食い・駆け込みやシステム対応
などで特需効果が発生し、
一時的に景気が底上げされるが、
導入・増税後から2年程度の間、
景気の停滞が続く現象。
過去4回のイベントでも
なんらかの影響が発生しており、
対応を誤ると経済的な大混乱を引き起こす。
特に消費税増税は、好景気が一定期間
続いた後に実施されることが多く、
必然としてリセッションの引き金になっているとも言える。
天使のシナリオ
一方で近年は消費税の増税は株価に織り込み済みとなる傾向にあり
消費税増税をきっかけに株価が上昇する
という天使のシナリオもあります。
アベノミクスでの上昇がその典型ですが、
そもそも悪魔のシナリオは消費税増税とは
直接関係のない悪材料と重なった結果であり、
必ずしも消費税と関連しているわけではない
という考え方です。
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あとがき
私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。
・バブル相場(1989年)
・ITバブル(2000年)
・NYテロ(2001年)
・リーマン・ショック(2008年)
・東日本大震災(2011年)
・チャイナ・ショック(2015年)
・コロナ・ショック(2020年)
「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。