今回は、1998年10月22日の上場から
8ヶ月で時価総額日本一となり、
日本企業の時価総額最高を記録している
NTTドコモの株価チャートを紹介します。
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INDEX
動画版公開
動画がお好みの方はこちらをごらんください。
発掘チャート<9437>NTTドコモ
NTTドコモの公募価格は390万円。
(分割修正後で1560円)
初値は460万円の17.9%高でスタートしました。
(分割修正後で1840円)
その後、ITバブル期にかけて上場後2年足らずで
株価は高値9140円と5倍超まで上昇しました。
2000年2月のピーク時に記録した時価総額42兆円は、
2020年4月末のトヨタの約2倍で、日本企業の歴代最高記録です。(2020年9月現在)
ちなみにITバブル当時のドコモの時価総額は
世界ランキングでも5位相当でした。(2000年3月)
2.54.7兆円 シスコシステムズ
3.52.5兆円 GE
4.45.2兆円 インテル
5.40.3兆円 NTTドコモ
6.35.0兆円 ボーダーフォン
7.27.9兆円 エクソンモービル
8.25.9兆円 NTT
9.25.9兆円 ウォルマート
10.25.3兆円 ノキア
時価総額日本記録とi-mode
当時は、ITバブルのピークであり、
IT企業の株価が次々にバブル化していましたが、
NTTドコモのような超大型株がこれだけ上昇したのには、
それなりの理由があります。
※分割後の株価に補正されています
1999年2月、上場後まもなく
サービスを開始したi-modeが大ヒットとなり、
ドコモの株価を押し上げました。
スマホ全盛の今ではi-modeといっても
ピンとこない方も多いかもしれませんが、
ドコモを時価総額日本一に導いたのは、
i-modeだったことは言うまでもありません。
なお当時のドコモの時価総額は
世界ランキングでも5位に相当
i-modeと営業利益1兆円
ドコモが携帯電話のサービスとして提供した
i-modeの簡易メールと簡易ブラウザ機能は、
日本に世界の先駆けとなってモバイル文化の
華が開く大きな役割を果たしました。
(初代iPhone発売から8年も前のことです。)
テキスト情報を送ることはできませんでした。
(数字をやりとりできるポケベルは別にあった)
i-modeは携帯電話の小さい画面で、
(文字数などの制限がありながら)
メールとWebサイト閲覧を可能にし、
ポケットに入れて持ち歩ける携帯電話+ネット端末として、
爆発的なヒット商品になりました。
同時期、MicrosoftがWindowsのモバイル版を模索するなど、
世界レベルでモバイル競争の幕が開いていましたが、
ドコモが実用化&収益化1番乗りになったわけです。
通話料収入減の解消が大きな課題
となっていました。
音声通話だけの携帯電話は、
インターネットメール等と競合し、
苦戦を強いられていました。
(ノートパソコン+モバイルモデムと競合)
i-modeは、通話料収入に依存していた同社に、
パケット通信料収入という新たな収益源をもたらし、
2002年3月期には日本企業として初めて
営業利益1兆円を達成します。
(この時はもうITバブルは崩壊していましたが)
ITバブルの時価総額42兆円というのは、
世界展開の夢も含まれた株価だと言えます。
(2020年4月末の株価は当時の4分の1以下)
ITバブルの象徴
NTTドコモはITバブルの象徴として
よく取り上げられます。
携帯電話でメールやブラウザが使えた
i-modeは世界をリードしていましたし、
マイクロソフトのように世界制覇できるのでは?
とも思いました。iPhoneが出るまでは。
その後のNTTドコモ
世界標準も期待されたi-mode規格でしたが、
残念ながらグローバル市場では苦戦しました。
日本の携帯電話はガラパゴス化とも呼ばれる
独自の進化を続けていましたが、
そうこうしているうちに2007年になり、
アップルから初代iPhoneが登場します。
ボーダフォンを買収したソフトバンクグループは、
iPhoneの国内販売を独占してドコモを猛追。
KDDIもこれに続いてドコモの地位は
相対的に低下していくことになります。
※分割後の株価に補正されています (補正前株価)
シェアの変動が落ち着いてくると、
キャリア各社は高収益化を暗黙の了解とし、
国民から割高な通信料を搾取し続けるという
現在の状況に繋がっていきます。
もっとも、各社は株主還元には積極的で、
成長ピークが過ぎると、増配や自社株買いで株主に利益をもたらしました。
(2020年4月末現在でドコモの配当利回りは約4%と高水準です。)
このような中、2018年末に政府意向への忖度もあり、
ドコモが通信料値下げを発表、このドコモショックから、
親会社のNTTを含む通信各社の株価は急落しますが、
収益の大幅悪化を回避して株価も回復しました。
その後、2020年のコロナ・ショックでは、
外出自粛など社会生活が大きく変わる中で、
テレワーク普及のメリットが市場で注目され、
逆行して高値更新するなど存在感を発揮しました。
NTTによる完全子会社化
2020年9月、NTTは子会社NTTドコモをTOBにより完全子会社化すると発表しました。
TOB成立後、ドコモは上場廃止となります。
親会社NTTの左遷先に過ぎなかったポケベル子会社が、モバイルコミュニケーション革命というイノベーションを達成し、利益でも親会社を超えたとこと。
(そのNTTはかつて時価総額世界一に君臨していました)
NTTドコモが成し遂げた奇跡のような成功物語は、日本経済のなかでも戦後最大のサクセスストーリーの1つじゃないかなと思います。
後にiPhoneで一世風靡したAppleの成功ですら、その延長といえるかもしれません。
あの時の株価は、今いくら
NTTドコモのTOB価格は3900円。
初値は1840円ですから2.1倍。
分割前のIPO価格の460万円で購入して
長期投資していたらイグジットで975万円。
22年間で2.1倍と考えると、
10倍以上になっている成長株はたくさんありますから
ちょっと残念な結果だと言えます。
一時的はGAFAMに匹敵する企業となる
可能性もあっただけに。
それでもまたNTTドコモのように、
投資家に世界の夢を見せてくれる
日本企業の登場を願いたいものです。
関連リンク
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あとがき
私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。
・バブル相場(1989年)
・ITバブル(2000年)
・NYテロ(2001年)
・リーマン・ショック(2008年)
・東日本大震災(2011年)
・チャイナ・ショック(2015年)
・コロナ・ショック(2020年)
「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。