テスラが市場の話題です。
今回はテスラ株の人気理由について
考えてみたいと思います。
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動画版公開
動画がお好みの方はこちらをごらんください。
テスラvs日本車メーカー9社
2020年7月にはトヨタを抜いて
自動車業界の時価総額1位に躍り出ましたが、
さらに株価は2倍近くまで上昇していて、
なんと日本車メーカー全体を大きく上回る
非常に高い市場評価を受けています。
日本車メーカー9社:34.73兆円
トヨタ:時価総額22.7兆円
ホンダ:時価総額 4.6兆円
スズキ:時価総額 2.2兆円
日 産:時価総額 1.6兆円
スバル:時価総額 1.6兆円
いすゞ:時価総額 0.8兆円
日野自:時価総額 0.5兆円
マツダ:時価総額 0.4兆円
三菱自:時価総額 0.3兆円
テスラ株が人気の理由
テスラ株がなぜ人気なのか?
疑問に思う方も多いでしょう。
下がトヨタとテスラの企業規模比較です。
トヨタ:1000万台
テスラ:50万台(2020年目標)
売上
トヨタ:29兆円(前期)
テスラ:1.8兆円(2020年3Q)
営業利益
トヨタ:2.4兆円(前期)
テスラ:-0.4兆円(2020年3Q)
純利益
トヨタ:2.1兆円(前期)
テスラ:-1.0兆円(2020年3Q)
時価総額
トヨタ:22.7兆円
テスラ:42.3兆円
販売台数で20分の1。
売上も16分の1で赤字の
テスラの時価総額がトヨタの2倍弱。
テスラ株はバブルだ。
そうかもしれませんが、
成長や期待という視点が考えると
違った面が見えてきます。
上のトヨタの数字は前期のものですが、
今期はコロナ禍で大幅減益ですし、
トヨタ以外の日本車メーカーも軒並み赤字。
一方のテスラもコロナで苦戦しながらも。
3Q期間は黒字化し業績を大幅回復させてきています。
今期を前年比でみると・・
トヨタ:-40%(2020年1Q)
テスラ: -8%(2020年3Q)
営業利益
トヨタ:-98%(2020年1Q)
テスラ:-16%(2020年3Q)
純利益
トヨタ:-76%(2020年1Q)
テスラ:-54%(2020年3Q)
営業利益率
トヨタ:0.3%(2020年1Q)
テスラ:4.1%(2020年3Q)
いかがでしょうか。
現時点ではトヨタの2Qが出ていないので、
トヨタも回復傾向にあると思いますが、
テスラの回復ぶりが印象的に映ります。
テスラは排出権取引で大きな利益を
上げていることでも有名ですが、
課題だった大量生産の効率化も
軌道にのってきており、
自動車メーカーの中でも利益率・成長の面で
競合他社より優位と評価されているわけですね。
そして、売っている車が日本車とは少し違う
将来性があるように見えるクルマ
付加価値から高値でも売れるクルマ
だとしたらどうでしょうか?
EVはガソリン由来の温暖化ガスを排出しないため
環境への感心の高い富裕層から
ハイブリット車以上に人気になりました。
航続距離はモデル3で約400-560km。
モデルSでは最大で840km。
当初からバッテリーを大量搭載し普通に乗れる航続距離を実現。
そのため高価ですが、富裕層に特化したマーケティング。
最近はモデル3など廉価版にシフトしつつあります。
■テスラのコクピット
自動車専用OSでソフトウェア制御されている
自動運転はまだレベル2相当ですが、
ソフトバージョンアップで機能が追加されるなど
先進的な仕組みとユーザー体験により、
顧客満足度を向上させています。
例えば、クルマを携帯電話やカメラに例えると
おおざっぱに次のようなものだとしたら・・
ハイブリット車:i-mode(音声+メール、簡易ブラウザ)
テスラ車:iphone
もしテスラ車がiphoneだとしたら、
期待値が高くなり人気化するのも
わかりますよね。
NTTドコモが規格し各社から発売されていた
ネット接続型の携帯電話です。
日本ではi-modeの実用化で世界に先駆けて
メールやブラウザなどのモバイル通信が普及しました。
ちなみに20年前、i-modeが流行った時も
NTTドコモ株はトヨタを抜いて40兆円
まで上昇しました。
もっともその後、iphoneに全部持って行かれ、
現在は9兆円台に留まっています。
日本の自動車株が安い理由
テスラがトヨタを抜いた理由は、
テスラ車が人気なこともありますが、
同時にトヨタや日本車が投資家に不人気
なこととも関係しています。
おそらく日本の個人投資家の皆さんも
アマゾンやアップル、マイクロソフトなど
米国トップ企業を買いたいと思ってもトヨタやホンダを
魅力的に思っていないのではないでしょうか?
では、日本の自動車株が安い理由
について考えてみます。
トヨタ 0.94倍
スバル 0.94倍
ホンダ 0.56倍
日 産 0.37倍
マツダ 0.34倍
トヨタでさえ資産価値を下回る
評価になっています。
将来性の付加価値ゼロってことです。
日本の自動車株は、コロナショックで
販売台数が落ち込んでいますし、
検査不正やゴーン事件などもありました。
でも株価が安い理由は、
それだけではありません。
自動車株が安い理由を
短期的理由と長期的理由で見ると
次のようなものでしょう。
長期:自動運転時代到来による収益懸念
コロナショックについては
長引く可能性もありますが、
いずれは収束する問題です。
より大きな理由は、
差し迫ってきた2つ目の
自動運転時代で収益が悪化する
ことへの懸念です。
PC、携帯電話の二の舞は避けられない
90代にインターネットブームを巻き起こした
パソコン業界がスマホ時代の到来と共に
没落していったことは、おじさん世代には
記憶に新しいことと思います。
パソコン業界がブームを過ぎると
成り立たなくなった理由は簡単です。
パソコンのコアとなる部品とソフトウェア。
CPUとOSを外部から調達する
アセンブリメーカーに過ぎなかったからです。
アセンブリではコストの安い
韓国、台湾、中国に勝てません。
国産PCメーカーは絶滅に等しい状況ですが、
インテルやマイクロソフトは、
しっかりと生き残っています。
当時からパソコンはWintel時代と呼ばれ、
コア技術を持つマイクロソフトとインテルが
高収益を得る収益構造でした。
そして、2007年にiPhoneが登場すると、
携帯電話でも同じことが起きました。
携帯電話の世界は、アップルとグーグルが
支配する世界になりました。
次にイノベーションが起こる見込まれているのが自動車業界です。
自動車業界の世界時価総額ランキング
ここで自動車業界と
自動運転時代に関わってくる
IT企業の時価総額を
世界ランキングでみてみましょう。
米アップル 209兆円
米グーグル 113兆円
中アリババ 90兆円
米テスラ 42兆円
米NVIDIA 35兆円
トヨタ 23兆円
独VW 8.0兆円
ホンダ 4.6兆円
米GM 5.1兆円
デンソー 3.5兆円
SUBARU 1.6兆円
日産自 1.6兆円
仏ルノー 0.7兆円
マツダ 0.4兆円
まず、株価が低いのはトヨタだけではなく、
ライバルのVWやGMでも同様です。
一方、2020年10月現在のトヨタは、
テスラだけでなく、自動運転技術の頭脳を
担当するNVIDIAよりも下位のポジション。
自動運転は夢の技術ではなく、
カウントダウンが始まっている
近い将来、実現する技術です。
はっしゃんは、現時点の市場評価が
ほぼ正しい未来だと思っています。
業界全体の時価総額の評価ですから
大きく間違ってはいないと思いますし、
中下位の生き残りは、かなり厳しいでしょう。
自動車メーカーの生き残る道
自動車業界もPCや携帯電話と
全く同じ道を歩んでおり、
既定路線になっていると感じます。
トヨタ自動車社長の豊田章男氏の
最近の発言から引用してみましょう。
「生きるか死ぬかの瀬戸際の戦い」
さすがに豊田章男氏は、
置かれている状況を100%把握
しておられるようです。
ほぼ戦力外の位置ながら、ドタバタしている日産は論外ですけど。
自動車の価値が自動運転の性能、
すなわちソフトウェアで決まるようになると、
車両製造技術はコモディティ化します。
自動車メーカーは、
もはや完成車メーカーとしては、
生き残っていけないので、
モビリティサービス企業として
活路を見いだそうとしています。
つまり、AIやビックデータ、コネクティッド技術など、
自動運転のコア技術を自社開発して握るのではなく、
周辺技術とサービスで生き残りを
賭けているということです。
テスラとトヨタの株価逆転は、
超高度化した新しい自動運転時代を前に
旧態の自動車業界が飲み込まれようとしている
のを現しているのが実情ではないでしょうか。
自動運転技術の競争に入ってくる
2020年以降の自動車業界は、
収益面はもちろん、生き残りにおいても、
不確実性が高い業界と言えるでしょう。
現在の株価や市場評価は、
待ち受けている過酷な運命を
如実に表していると言えそうです。
米カルフォニア州や中国では、
2035年までにガソリン車を禁止する
意向を表明しています。
を表明しましたが具体策はこれから。
本来は、加州や中国と同様の表明を同時に
してよいくらいだと思います。
携帯料金で国民の人気取りなどしている場合ではなく、
ここでイノベーションに乗れないと
国内の自動車産業は大変なことになります。
テスラに投資したい投資家は多いと思いますが、
配当利回りが高いという理由だけで、
オールドタイプの自動車業界に投資できますか?
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