2020年7月現在、日本の自動車業界は
コロナショックによる販売不振もあり、
PBR0.3倍-1.0倍程度の評価です。
自動運転というイノベーションから出遅れ、
不正体質を引きずっている自動車業界の現状と
自動運転時代に訪れる運命について考察します。
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最近の自動車業界の主な事件
2009年8月 トヨタ米プリウス暴走事件 (不具合ではなく、運転ミスで確定)
2015年11月 タカタ エアバッグ暴発事件
2016年4月 三菱自動車 燃費改ざん事件
2017年9月 日産 新車検査不正事件
2017年10月 SUBARU 新車検査不正事件
2018年7月 日産 新車検査不正事件 (再発)
2018年8月 スズキ 検査不正事件(少数ではあるが、マツダ、ヤマハでも発覚)
2018年9月 SUBARU 新車検査不正事件 (再発)
2018年11月 日産 ゴーン会長不正事件
2018年12月 日産 新車検査不正事件 (再々発)
海外企業でもフォルクスワーゲンが
悪質な排ガス不正事件を起こしていますが、
ここでは日本企業を取り上げます。
最近は、ゴーン会長の逮捕や検査不正事件で
日産の不祥事が目立ちます。
http://hashang.kabuka.biz/remains/discover/7201
しかし、リストを見ても分かるように、
ほとんどのメーカーが事件や不祥事に
関わっています。
三菱自動車は3度目の不正発覚で、
自力再建が困難となり、
日産傘下となりました。
http://hashang.kabuka.biz/remains/discover/7211
最近では、タカタがエアバッグ暴発の
リコール費用が膨らみ倒産しています。
http://hashang.kabuka.biz/remains/discover/7312
理論株価チャート分析
各社の理論株価チャートから業績を確認してみましょう。
理論株価は、EPS、ROE、BPSなどから資産価値と事業価値を算出しています。
オレンジ色のラインが理論株価の推移です。
業績は過去最高水準ですが株価は低迷中。チャレンジしようとしているが評価されない。
検査不正やゴーン会長逮捕で下落傾向です。今期は減益減配の見通し。
タカタ事件の下落から一時回復しましたが、減益見通しで株価も安値に接近中。
減益見通しで株価は低迷。メキシコ工場依存が高め。広島カープは強いのに。(笑)
度重なる検査不正で株価低迷も今期はやや回復見通し。メキシコ工場なし。
部品メーカーも見ておきましょう。業績は横ばいも株価は連動せず下落。
理論株価との連動性が高かっただけにリセッションを示唆する値動き。
業績面では、コロナショックで
各社非常に厳しい状況ですね。
ゴーン氏が去った日産は、
リーマンショック以来の安値まで
売り込まれています。
自動車株が安い2つの理由
自動車株は、検査不正やゴーン事件で
大きく売られましたが、安い理由は、
それだけではありません。
自動車株が安い理由を
短期的理由と長期的理由で見ると
次のようになものでしょう。
長期:自動運転時代到来による収益懸念
自動車関税問題については、
トランプ氏のパフォーマンスなので、
落としどころはいくらでもあるでしょう。
より大きな理由は、
差し迫ってきた2つ目の
自動運転時代で収益が悪化する
ことへの懸念です。
PC、携帯電話の二の舞は避けられない
90代にインターネットブームを巻き起こした
パソコン業界がスマホ時代の到来と共に
没落していったことは記憶に新しいですね。
NEC、富士通、東芝、シャープ、ソニー、日本IBM
パソコン業界がブームを過ぎると
成り立たなくなった理由は簡単です。
パソコンのコアとなる部品とソフトウェア。
CPUとOSを外部から調達する
アセンブリメーカーに過ぎなかったからです。
アセンブリではコストの安い
韓国、台湾、中国に勝てません。
国産PCメーカーは絶滅に等しい状況ですが、
インテルやマイクロソフトは、
しっかりと生き残っています。
当時からパソコンはWintel時代と呼ばれ、
コア技術を持つマイクロソフトとインテルが
高収益を得る収益構造でした。
そして、2007年にiPhoneが登場すると、
携帯電話でも同じことが起きました。
携帯電話の世界は、アップルとグーグルが
支配する世界になっただけのことです。
自動車業界の時価総額ランキング
ここで自動車業界と
自動運転時代に関わってくる
IT企業の時価総額を
ランキングしてみましょう。
米アップル 92.3兆円
米グーグル 80.6兆円
中アリババ 43.7兆円
トヨタ 22.3兆円
米NVIDIA 10.0兆円
独VW 8.5兆円
米テスラ 6.3兆円
ホンダ 5.7兆円
米GM 5.7兆円
デンソー 4.1兆円
日産自 4.1兆円
仏ルノー 2.3兆円
SUBARU 2.0兆円
マツダ 0.7兆円
自動運転は夢の技術ではなく、
カウントダウンが始まっている
近い将来、実現する技術です。
はっしゃんは、現時点の市場評価が
ほぼ正しい未来だと思っています。
自動車メーカーの生き残る道
自動車業界もPCや携帯電話と
全く同じ道を歩んでおり、
既定路線になっていると感じます。
トヨタ自動車社長の豊田章男氏の
最近の発言から引用してみましょう。
「生きるか死ぬかの瀬戸際の戦い」
さすがに豊田章男氏は、
置かれている状況を100%把握
しておられるようです。
戦力外に近い位置ながら、権力闘争している日産とは違いますね。
自動車メーカーは、
もはや完成車メーカーとしては、
生き残っていけないので、
モビリティサービス企業として
活路を見いだそうとしています。
つまり、AIやビックデータ、コネクティッド技術など、
自動運転のコア技術を自社開発して握るのではなく、
周辺技術とサービスで生き残りを
賭けているということです。
レベル1:自動ブレーキ、急発進防止などのアシスト機能
レベル2:部分的自動運転 (自動ブレーキ+自動追尾走)
レベル3:ドライバー責任の自動運転 (緊急時は人間が交代)
レベル4:特定環境下での完全な自動運転
レベル5:制限のない完全な自動運転
コア技術を握るのは、
Google、Apple、NVIDIA
などの米IT企業になる可能性が高いでしょう。
え、アップルが自動運転?と思う方は、
ググってみてください。
現在は、システムだけ開発しているようです。
自動車の価値が自動運転技術の性能で左右されるようになった時、
車両技術は一気にコモディティ化します。
車両技術が欲しければ、価値が下落してから買えばよいのです。
超高度化したIT業界に
自動車業界が飲み込まれようとしている
というのが実情ではないでしょうか。
自動運転技術の競争に入ってくる
2020年以降の自動車業界は、
収益面はもちろん、生き残りにおいても、
不確実性が高い業界と言えるでしょう。
現在の株価や市場評価は、
待ち受けている過酷な運命を
如実に表していると言えそうです。
配当利回りが高いという理由だけで、
自動車業界に投資できますか?
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