株ブログ はっしゃん式 発掘チャート


賢者は歴史に学ぶ。株式市場の記憶に残る名場面を株価チャートで再現して振り返る懐古的株ブログ

スポンサーリンク

<8602>山一証券を自主廃業に追い込んだ粉飾だらけの決算書


発掘チャート
山一証券破綻時の株価チャート

今回は「社員は悪くありませんから」
という名言を残した山一証券の倒産と
株価チャートを紹介します。

最近、株を始めた人は知らないと思いますが、
投資家が知っておくべき教訓です。

スポンサーリンク

拓銀から1週間後の連鎖破綻

1997年11月24日、山一証券が経営破綻を発表し、
株式市場はパニックとなりました。

破綻発表前は100円前後だった山一株には売りが殺到。
値が付いてまもなく気配は、1カイ2ヤリ状態となり、
1ヶ月後には市場から退場となりました。

カイは買い、ヤリは売りのことで、
1カイ2ヤリ状態とは、倒産株などで
 2円 売り気配
 1円 買い気配
で気配値が固定されることを指す。

当時、都市銀行や四大証券は倒産しない(させない)
と思われていましたが、
史上初の都市銀行破綻となった拓銀の倒産から、
わずか1週間。
今度は四大証券に破綻が連鎖したのです。

「次はどこが危ない」という話が市場にあふれ、
証券株、銀行株が大きく売られましたが、
特に芙蓉グループ(現みずほFG系)など、
危ないグループの株が大きく売られました。

芙蓉グループは富士銀行系で、
安田、浅野、大倉の財閥系列の企業集団。
第一勧銀、興銀と合併し、みずほグループとなる。

山一証券は破綻した拓銀の主幹事証券でしたが、
当時の上場企業は企業グループ毎に株式を持ち合っており、
1つが破綻すると連鎖しやすい構造でした。

当時は、三洋証券、拓銀、山一と金融機関の倒産が連鎖しました。

発掘チャート<8602>山一証券

■週足チャート(1997年1月-1997年12月)山一証券破綻時の株価チャート

一任勘定取引と損失補填

バブル期に過大な投資をして、
損失を出したのはどこも同じでしたが、
山一証券が転落したきっかけは、
悪質な不正行為でした。

1つ目は、「にぎり」と呼ばれる
利回り保証型の一任勘定取引を裏取引として
得意客向けに継続していたこと。

一任勘定取引や損失補填は、
バブル期には合法行為でしたが、
証券取引法の改正で禁止されていました。
ここがキーポイントです。

通常、株式投資にはリスクを伴いますが、
1.投資運用を証券会社が代行する一任勘定取引
2.運用損失を証券会社が補填する損失補填
のようなメニューがVIP向けに提供され、
お金を預けるだけで利益が出る構造でした。
 
右肩上がりの株価を前提として、
このようなメニューを提供する
証券会社にもあきれますが、
バブルとは、そういう時代だったんですね。
 
バブル崩壊で証券各社が損失補填を計上して問題化し、
著しく不公平で正義に反する行為として非難が殺到。
1991年の証券取引法改正で禁止されました。

不正の背景としてはバブル崩壊で
株価が右肩上がりでなくなり、
株式投資で簡単に儲けることが
難しくなったことが上げられます。

四大証券の最後尾だった山一は、
売上を維持するため違法サービスの提供を
止められなかった
というわけです。

簿外債務と粉飾決算

2つ目は、不正行為の結果、
発生した含み損を「飛ばし」行為を行って
簿外債務とし、子会社に付け替えることで、
決算を粉飾したことです。

違法行為である「にぎり」は山一社内でも、
極秘事項として処理されていました。
 
その結果発生した損失は、
社内の正規ルートで計上できるはずもなく、
「飛ばし」行為が続いていました。
 
その結果、最終段階では不正に関与した
業績に貢献していない社員が上位に出世する構造となり、
不正集団が会社を乗っ取ってコントロールしている
状態となっていたようです。
 
簿外債務の総額:2600億円。

ここまでくると、完全に問題外なのですが、
その後も、ライブドア、オリンパス、東芝、日産・・・
と、枚挙にいとまがない。(笑)

ところで、山一証券は「証券業」という
スポンサーさえ見つかれば、
再生可能な業種にもかかわらず、
不正行為の内容が悪質すぎて再生不可能とされ、
自主廃業の道を選択することになりました。

前社長が総会屋への利益供与事件で逮捕されるなど、
闇社会との繋がりも深かったようです。

なお、総会屋事件では山一証券だけでなく、
第一勧銀、四大証券から計32人が逮捕されています。
 第一勧銀11人
 山一證券8人
 大和證券6人
 日興證券4人
 野村證券3人

ライブドア事件では粉飾決算で堀江貴文氏が逮捕・収監されましたが、
悪質度からいえば、山一の方が数段上だと思います。

元山一証券マンからの情報

元山一証券マンの
やるっつえぶらっきん氏より、
当時の状況について
コメントいただきましたので、
参考までに共有しておきます。

投資家が知っておくべき教訓

山一証券の社長は、
社員は悪くありませんから
と言って泣きましたが、
忸怩たる思いだったことでしょう。

ちなみに、主犯は前会長と前社長であり、
最後に泣いて詫びた社長は、
前社長が総会屋事件で逮捕されたため、
後始末を押しつけられただけということです。

法令遵守意識のかけらもない
実に情けない話です。
こんなデタラメな経営での倒産ですから、
そりゃ社員は報われません。

ようするに、企業は窮すれば
生き残るために違法行為をいとわない
ということです。

むしろ、顧客や投資家に平気で嘘をつく
と思っていた方がよい。

あなたが見ている
決算書は粉飾されているかもしれない
投資家はこれを肝に銘じるべきです。

30年間の倒産件数を平均すると年間8-9社の上場企業が倒産していることになります。

スポンサーリンク

あとがき

私たちは株価チャートを
結果から見て評価する傾向にありますが、
実際の相場は現在進行形ですから、
当時の業績や市場期待、需給を投影した
株価チャートは貴重な実録データです。

「賢者は歴史から学ぶ」といいます。
今も昔も株式投資の基本コンセプトは
「将来、値上がりしそうな株を買う」
ということで同じですから、
過去を知るということは、
未来を知ることに通じると思います。

ピックアップ